息つくまもなく化け物を囲った隆永とその部下らしき人達によって、化け物は退治された────らしい。
素人の幸には何がどうなったのか全く理解出来ず、ただただ隆永にしがみつくことしか出来なかった。
「幸さん? 幸さん?」
名前を呼ばれているのに気が付きハッと顔を上げる。
隆永は困ったように眉尻を下げて笑った。
「大丈夫? 家の鍵ある?」
隆永は目線で前を示す。いつの間にか自分の家の前まで戻ってきていたことに気がついた。
「鍵、ある」
「良かった。一旦下ろすよ」
そう言われて地面に足が着いた瞬間、まるで人形のようにストンとその場に座り込んだ。
それに一番驚いたのは隆永だった。
「幸さん!?」
「あ、ちょっと……腰抜けちゃったみたい」
隆永は一瞬悲痛な表情を浮かべて幸の腰に手を回した。
「触るよ」と詫びを入れて、幸のポケットに手を入れる。鍵を探り当てた隆永はかちゃりと鍵を開けた。
店の中へ入るとすぐに今日に足でパイプ椅子を引っ張り出してきて幸を底に座らせた。
「ありがとう」
「ごめん」
感謝と謝罪の言葉が被った。
幸は目を瞬かせた。