必死に走りながら何度か角を曲がった。明らかにその後は自分の後を追ってきている。曲がる度に距離が縮まっているような気がして、上手く息ができない。


もう一度角を曲がったその時、なにかに足を取られて雪の上に転がった。

濡れたアスファルトで膝を擦りむき、痛みに顔を顰める。


「……ったぁ」



傷の具合を確かめようと足に視線を向け、幸は目を瞬かせた。

なにかに躓いたと思った方の足の足首に、細くて透明な何かがぐるぐると絡まっている。



「なに、これ」



戸惑いながらも触れてみれば、それはピアノ線のように細い糸だった。



「糸……? なんでこんなのが」



戸惑いながらもそれを解こうと手を伸ばしたその時、雪をふみしめる足音が一気にこちらに近づいた。

ばくばくと心臓がうるさい。

震える手で糸を引っ張る。すると手のひらに紙で切ったような切り傷がすっと入った。


足音がもう目の前まで迫っている。生暖かい血がポタポタと雪の上に落ちた。

目と鼻の先でザッと音がした。恐怖に身がすくみ咄嗟に目を閉じたその時、