「今度亀でも釣るか」
「は?」
思いもよらない誘いに間抜けな声が出た。
嬉々を見下ろせば馬鹿真面目な顔でこちらを見ている。
徐々に笑いが込み上げてきて、しまいには腹を抱えてケラケラと笑った。
昔から言葉足らずで誤解されやすいところがある。その言葉だって嬉々なりに自分を心配してかけた言葉なのだろう。
「流石に亀釣って叱られて罰則食らったら、子供たちに示しつかないって。……代わりにスッポンでも食べに行く?」
「お前の奢りだぞ」
「まっかせなさい。毎週あちこちで空亡の残穢回収してるおかげで、実入りはいいんだよね」
くく、と嬉々が目を細めて笑う。
子供たちの前でもそうやって笑えば、何度も濡れ衣を着せられることは無いだろう。
そう言ったところで本人は何も気にしていないので、「うるさいほっとけ」と一蹴されるだろうから余計な事は言わないけれど。
嬉々に別れを告げて反橋の下を抜け出して歩き出す。
何度も何度も通った道を辿りながら、子供たちが待つ校舎を目指した。
【続】