はーい、と元気よく返事をした子供たちが「急げよ!」と言い残してバタバタとかけていく。

その背中にひらひらと手を振って、見えなくなってから息を吐いた。


そろそろ戻るか、と足に力を入れたその時、砂利をふみしめる音がしてパッと顔を上げる。

不揃いの前髪からこちらを見つめる目と目があった。



「嬉々じゃん。サボり?」

「お前と一緒にするな」


嬉々は少し離れたところで砂利を足で鳴らしてその上に座る。

慣れた様子に思わず小さく笑った。



「……馬鹿だよお前は」



嬉々が何を思ってどういうつもりでそう言ったのかは聞き返さずとも分かる。



「馬鹿だと思うよね。それでも俺はずっとここで、あいつを待ってるんだよ」


あいつはもう戻れないと言った。だから戻る場所があって、そこで待っていればいつか戻ってくるかもしれない。

若い頃のそんな安直な考えは、今ならどれだけ馬鹿げているのか分かる。

それでもまだ自分はこうしてここにいる。

だから教師になった。



ゆっくりと立ち上がって伸びをした。