「────あっ! 薫センセーこんな所にいた!」



懐かしい夢を見ていた気がする。

長い眠りから現へと引き戻され、頭の奥がじんわりと痛んだ。ゆっくり目を瞬かせると視界いっぱいに教え子たちの顔が写った。



「もう二学期の就業祭終わりましたよ。教室で待っててもいつまでも帰ってこないから探しに来ました」

「早く通知表配ってください! 一学期の悪夢を早く塗り替えないとおかしくなりそう……ッ!」

「薫センセーもここでよくサボってんの? 俺たちだけのサボり場かと思ってた」

「薫先生、大丈夫ですか……?」



彼らが着ている松葉色の制服を身に付けていたのがつい最近のように感じる。

不思議そうに自分の顔を覗き込む教え子の頭に手を伸ばす。ガシガシとその小さな頭を撫でれば、彼らは迷惑そうな顔をして首を縮める。


ひとつ大きな欠伸をこぼして、不自然にならないように目尻を拭った。



「ごめんごめん、爆睡してた」

「よくこんな寒い所で寝れんな〜」

「あはは、ここって妙に居心地いいからさ」



分かる分かる、と若かりし頃の自分たちと同じようにここを秘密のサボり場所にしている子供たちが同調する。




「職員室寄って通知表取ってから戻るから、先に教室戻ってて」