「馬鹿な上層部に腹が立った、それは事実。それでこうも思った。このままじゃ薫も、宙一や志ようさまと同じ道を辿ることになるって。 本庁がいまの本庁であり続ける限り、薫はいずれ殺される。だから、そうなる前に俺が薫を守らなくちゃいけない」

「お前、何言って────」

「約束しただろ? "ずっと守る"って」



芽は両手を伸ばして、背中に手を回し抱き締めた。


何を、言ってるんだ芽は。

本庁の奴らを殺したのは、俺のため? このままじゃ俺が殺されるから、先に本庁の奴らを殺す?

普通に考えて、そんなのおかしいって分かるだろう。普段のお前なら、自分の言っていることがどれだけ馬鹿げているか、理解できるはずだろう。


目の前にいるこいつは芽のはずなのに、まるで別人のように思えた。いっその事別人だったらどれだけ良かったか。


分からない、何一つ分からない。嫌だ、分かりたくもない。



「俺がいつ、芽にそんな事頼んだんだよ! お前が……お前が勝手にそう言い始めたんだろ!」

「ああそうだよ、俺が勝手に言い始めたことだよ。でも結局は全部薫のためで、」



胸を思い切り押して突き飛ばし立ち上がった。

驚いた芽が目を丸くして自分を見上げる。



「やめろよッ! 芽はいつも俺のため俺のためって言うけど、結局は全部自分のためなんだろ!?」

「違う、そうじゃない。ちゃんと話を聞いて薫」

「違わない! お前は昔から全部俺のためだっていって、結局はお前の自分勝手だった!」