なるほど、と頷いた。
「進路ねぇ……」
そう呟いて窓の外を眺める。
進路はもう決まっている、というか決められている。
自分は九つの時にわくたかむの社で御祭神から次の神主に選ばれている。
けれど九つの時に家を出てから帰ったのは一度だけ、ろくに顔も出していないしここ数年は御祭神のために祝詞を奏上したこともない。
そんな自分が社へ戻ったところであそこの神職たちは受け入れないだろうし、そもそも戻って神主になる気はさらさらない。
となると、卒業後は別の社で奉仕するか嬉々と同様神修の教員になるか。人にものを教えるのは向いていないので、教員は最初から勘定にはいれていない。
となると、社の神職しか自分に残された道は無い。でも、その道を選びその道を歩む自分を想像することが出来なかった。
いくら考えても今日は答えが出そうになかったので、考えることを辞めた。
「嬉々、今日暇? 亀釣りに行こうよ」
「部活がある」
「あー……そっか。了解」
ノートを閉じた嬉々は学生鞄を肩にかけた。
ちらりとこちらに視線を向けたので「気にしないで。部活頑張って」と手を振る。ひとつ頷くと教室から出ていった。