戦線が動いていた頃はろくな神葬祭が行われていなかったらしく、集結を迎えて一番に執り行われたのが合同神葬祭だった。


神修の敷地内には小さな祠が建てられた。作られたわけはよく知らないけれど、宙一のために作られたのだろう。


建物や土地の至る所に今も尚深い傷が残っているけれど、修繕は順調に進んでいる。もうひと月もすればすっかり元通りになるだろう。

けれど皆の心に残った傷はまだ癒えそうにない。



「ねぇ嬉々。先生はお前だけって言ったけど、嬉々はもう進路希望出したの?」

「ああ」



嬉々と進路の話なんてこれまでしたことは無かったけれど、自分と同じでそんなものはまだ決まっていないのだと勝手に思っていた。

とっくに先を行っていたクラスメイトに若干の焦りが芽生える。



「参考までに聞くけど、どうするつもり?」

「専科を卒業したあとは神修で働く」

「神修で働くって……教師になるの?」



頷いた嬉々に目を見開いた。

「似合わないね〜」の「に」まで言って、嬉々は鋭い目でこちらを睨む。

口を抑えて「何でもない」と首を振った。



「別にやりたくてそう決めた訳じゃないコレ(・・)のせいで本庁に目をつけられた卒業後私を監視下に置いておきたいらしい」



とん、と人差し指でノートを叩いた嬉々。

昔見せてもらったことがある。嬉々が初等部の頃から個人的に研究している(のろ)いや呪詞(じゅし)についてまとめたノートだ。