電球を替えてくれたお礼にと夕飯をご馳走になって、帰路に着く頃にはすっかり夜も深まっていた。

足元を照らす街灯の光は頼りなく、どうしてか無性に不安になる。



隆永と初めて二人で買い物に行った日を思い出した。あれから隆永は律儀に毎回買い物に付き合って荷物持ちを買って出てくれる。

『もう暗いし一人じゃ心配だから』そう言った隆永の言葉を思い出す。



「なんでいて欲しい時にいないのよ……」



本人がいなければ文句を言っても仕方が無いのだけれど、ここひと月近く顔を見せない恩知らずを思い浮かべてそう独りごちる。


暗くて心細くなってるだけだ、早く帰ろう。


そう思って歩くスピードを早めたその時、静かだった往来に誰かが雪を踏みしめる足音がした。数からして、二三人だろうか。

遠くからこちらに向かってゆっくり歩いてくる音がする。


良かった、ここを歩いているのは私だけじゃないんだ。


幸はホッと息を吐いた。


足音はやがて早くなる。走っているのだろうか。


溶けかけた雪で滑りやすくなっているのに、よく走れるなぁ。


呑気にそんなことを考えて何となく興味本位で振り返った。足音からして多分十メートルくらい後ろにいるはずだ。


しかし振り向いた先には暗闇と、街灯が照らすゆきの積もった道路の一部だけが広がっている。