「────嬉々!」
最前線にいた薫が嬉々と再会したのは、一旦終結を迎えた翌日の夕暮れ時だった。
詰所として使用していた社へ状況報告へ戻ると、偶然その場に嬉々がいた。
「薫か!」
嬉々が珍しく声を張る。
お互いに駆け寄った。
「どうしてここに? 嬉々たち後方支援でしょ」
「私の持ち場が落ち着いたからここへ行けと指示された怪我人の手当を手伝ってる」
久しぶりに嬉々の早口を効いて何故か肩の力が抜けた。
そんな様子を見ていた神職がニヤニヤしながら「ちょっと話してこいよ」と背中を押してきた。何かと勘違いしたらしい。
そんなんじゃないです、と苦い顔をしながらそれでも二人で詰所を抜け出した。
よく知っている場所でもなかったので、結局二人で拝殿前の段差に腰掛けた。
「お前も満身創痍だな」
「まぁね。でも嬉々なかなかじゃん」
もう傷を作ってから数日は経ったのかかさぶたになった鋭い切り傷が右耳から鼻先まで伸びていた。
「痛そう。嬉々これでも女子なのにね」
「お前にもそういう発想はあったんだな」
「失礼だな俺の事なんだと思ってるのさ」
「まあキズモノになろうと問題ない婚約者がいるからな」
「そっか。……え? うそ嬉々って婚約者いたの!?」
「うるさい耳元で騒ぐな」