「ぞ、続報……ッ! 続報ッ!」



若い神職は狂ったようにそう叫んだ。皆が笑顔で振り返る。



「審神者さまの死亡を現地神職複数名が確認! 何らかの祝詞を奏上したのち死亡!」



喧騒がまた一瞬にして凪いだ。

審神者さまが? なぜ審神者さまが現場に。誰かかむくらの社へ確認を。審神者さまは社から出る術を知らされないはずでは。何かの間違いでは無いのか。ではなぜそのような情報が。審神者さまがいた事は確からしい。死亡とはどういう事だ。祝詞を奏上して死亡したと。まさか空亡修祓の祝詞奏上を? では審神者さまが空亡を祓ったという事か! 審神者さまが空亡を祓ったのだと。審神者さまが? なんという事だ審神者さまが。審神者さまが成し遂げたんだ! 審神者さま、審神者さま。


困惑の声はやがてまた歓声へと移り変わる。

先程の歓声よりも大きなそれは、まるで動揺を勢いで覆そうとしているように聞こえた。



何故、こいつらは……喜んでいるんだ?

審神者さまが、志ようさまが、人が一人死んだんだぞ。お前らが祭り上げてきた一人の女性が。




どろり、どろり。


まずい、まずいまずいまずい。溢れる、溢れて満ちていく。目の前がどんどん暗くなっていく気がする。




審神者さま万歳、審神者さま万歳。





やめろ、やめろやめろやめろ。頼むからやめてくれ。

頭がおかしくなる、揺れる、傾く、割れる。




どろり、どろりどろり。




沈む、どこまでも。上がれない。手を伸ばしても手を伸ばしても、届かない。光が見えない。

ああ……もう、駄目だ。





とぷん────その瞬間、何かが深く沈み混む音がした。