「────君、見たのか。先見の明であいつの未来を」
薄暗くなった社頭に佇んでいると、肩に羽織がかけられた。顔をあげれば琥珀色の瞳が責めるように自分を見ていた。
「……見たっていうか、見えたっていうか」
「見たことには変わりないんだろ」
「そう、ね。でも芽くんのことだけじゃない。皆のこれからが見えた」
一瞬酷く悲しげな目をした白虎が志ようの肩を掴んだ。
「……無茶するな、と言っても君は聞かないよな」
「ふふ、そうね。だって先を知っているのは私で、それを変えられるのも私しかいないから。多分これが、最後に私に出来る唯一のことなの」
「最後なんて口にしないでくれ。言祝ぎを口にするんだ」
白虎の手が小刻みに震えていることに気がついた。震えるその手に自分の手を重ねる。
白虎と出会ってから一年も経っていない。けれども彼が自分を慕ってくれているのは毎日ちゃんと感じていた。
「白虎にも迷惑かけちゃうかも。御祭神さまに"今の審神者はポンコツだ"なんて告げ口しないでね」
白虎の額をぴんと弾いた志ようは「さぁ、ご飯ご飯!」と鼻歌を歌いながら歩き出した。