気持ちを吐露すればどっと疲れたのか、目が覚めると志ようの部屋で眠っていた。
志ようが自分をここまで運べるはずがない、となると信じ難いけれどあの白虎が運んでくれたのか。
のそりと布団を抜け出すと台所の方から賑やかな声と味噌汁の匂いがする。外は日が傾いていた。
顔を出せば案の定白虎に鋭く睨みつけられた。そんな白虎の頬をつねった志ようが「おはよう」と微笑む。
ぺたぺたと頬に触れて「顔色良くなったね」と安心したように息を吐く。
「晩御飯もうすぐ出来るけど、食べてから帰る?」
「いえ……日が沈む前には出ないといけないので」
かむくらの社は日が沈めば、何人たりとも足を踏み入れてはいけない。
じゃあ鳥居まで見送るね、と志ようが申し出る。いつも断っているのだけれど、その日は食い下がってきたので見送ってもらうことにした。
「明日から三日間本殿に籠って祝詞奏上する神事があるから、芽くんも三日間はお休みね。神修じゃゆっくり出来ないかもしれないけど、しっかり休んで」
社頭を歩きながら、志ようは思い出したようにそう言う。
前にも同じような事が何度かあったので素直にひとつ頷けば志ようは手を伸ばしてガシガシと頭を撫でた。