「あのね芽くん。もし、私が今の芽くんみたいに、急に塞ぎ込んで目の下に濃い隈を作ってきたら、どう思う?」
そんなの、心配になるに決まって────。
「そうだよね。じゃあもう、芽くんなら私が何を言いたいか分かるよね?」
どうしてだろう。
今までこの人の前で上手く嘘をつけた試しがない。
あの人の前でもそうだった。いつも大きな目を逸らさずに覗き込むようにじっと見つめられ、するとどんな隠し事もバレてしまう。
「審神者さまは────お母さんに似てる」
ポツリとそう呟いた自分に、志ようは目を瞬かせた。そして「話をそらさないの」ときゅっと眉根を寄せて全然怖くない怖い顔を作る。
何だか笑えてきた。
「真面目な話をしてるのよ」
「ふふ……ごめんなさい」
「芽くん」
諭す声に変わった。
どきりとした。瞼がじわじわと熱くなってきて喉の奥がぎゅっと締まる。
「白虎は屋根の修繕をしている頃よ。今なら誰も咎めない。大丈夫、我慢しなくていい」
その声が、解していく。
ああ、どうして。
もし、あなたに抱いた気持ちが恋心だったなら。
俺は一緒この苦しさをあなたの前で口に出したりしなかった。好きになっていたらきっと、格好つけたままでいたかった。
なのにあなたは、まるでお母さんがそうしてくれたように、俺の情けない姿を許すと言った。