薫達が経ったあと、自分は言われた通り日中はかむくらの社で志ようの傍で過ごした。
外と隔絶されたその場所は、これから大きな戦いが起きるだなんて想像も出来ないほど穏やかで優しい空気が流れていた。
社の決まりで巫女以外の寝泊まりが禁じられているため、日が暮れる前には神修に帰る。授業は無いのでまた朝からかむくらの社へ向かう。そんな日々を繰り返していた。
そして四日目の夜。まるで数日前の静けさが嘘のようにまねきの社には激しい戦線の様子が各所の連絡係から伝わってきた。
本庁も混乱を極め、神修に残ることになった自分達学生の相手をしてくれる者などいるはずもなく、救護所になった校舎の一階で手当を手伝ったり、自分達で出来ることを探した。
しかし血の穢れを最も嫌うかむくらの社に出入りする自分はその手伝いですら許されず、ただ遠くから呆然と眺めることしか出来なかった。
己の手を見つめ、握りしめた。爪が手のひらに食い込む。
痛い。
自分の無力さが、痛い。
分からない。
この言祝ぎは何のためにあるのか、分からない。