「芽、大丈夫?」
薫が不安げに自分の顔を覗き込んだ。
大丈夫だよ、そう言いたいのに言葉が上手く出てこない。
「帰ってきたら、金平糖食べたくなるかも」
ちらりとこちらの様子を伺うようにそう呟く。
あはは、分かったよ。用意しとくよ。
そう言うつもりだったのに、絞り出た言葉はただ「うん」と相槌を打つ返事だけだった。
薫は気遣うような視線を残したあと歩き出した。嬉々もじっと自分を見つめた後くるりと背を向け歩き出す。
「じゃ、ちょっくら行ってくらぁ。直ぐに帰ってくるからさ」
休み時間にトイレに行く時と同じように手をひらひらさせて宙一が歩き出し、やがてその背中は見えなくなった。