自分が力を培ってきたのはこいつらを守るためだったのか?
自分が従ってきたのは、こんな腐り切った者たちだったのか?
薫を虐げ、友人を危険な場所へ向かわせたのは、自分の保身しか頭にない奴らだったのか?
どろり、どろり。溢れ出る、侵食していく。どす黒くて醜い何かが。
揺らぐ、揺れる。指針にしてきたはずの自分の中の芯が。
「なんて顔してんだよ芽。ダイジョーブだって! 阿呆なのが幸いして後方支援になったし、危険な所には派遣されないんだって」
「私も後方支援だ」
「それにほら、前言っただろ。脳味噌詰まってない分、俺の能力は手足に全振りされてるんだって。やべぇと思ったら自慢のこの足でなりふり構わず逃げるからさ!」
へへ、と鼻を擦った宙一は拳を胸にとんとぶつけてきた。
「お前こそ、審神者さまの護衛っていう大役任されたんだろ? チビって逃げ出すなよォ」
任務の話を聞かされた日誰よりも動揺していた癖に、なぜ宙一はそんなにも明るく笑えるんだろうか。
「胡散臭い笑顔だな気持ち悪い」
嬉々が目を細めて笑った。
指摘されるまで自覚はなかった。今自分がどんな顔をしているのか、よく分からない。