これは本庁の決定、いずれは学生が動員されると薫から聞いていた、宙一も嬉々も直階は取得していて、神職としての活動自体は神役諸法度でも認められている。

でも、だったら。


"お前の言祝ぎの力が強いのは、いざと言う時誰よりも先頭に立って守り導くためにあるんだよ。決して自惚れず、研鑽を重ねなさい"


幼い頃から耳にタコができるほど言い聞かされてきた言葉だった。


その言葉を疑う事なんて一度もなかった。自分の力が他者と違うのは理解していたし、当然の務めなのだと思っていた。

薫が呪の調整で苦労していたほどでは無いけれど、自分も苦しい稽古を積み重ねてきた。それがこの力を宿した自分の、当然の義務だと思っていたからだ。


何よりもその全てが弟を────薫を、守るために繋がっていると思ったから。

守り導くための力、そのために努力してきた。



ならばどうして、なぜ。


────俺だけがこうして何もしていない?