「────は? 今、何て……」
結局薫たちは夕飯時になっても帰ってこなかった。
先に夕飯と風呂を済ませて宿題に取り掛かっていると、20時を過ぎた頃に部屋のドアが叩かれた。
きっと薫か宙一だろうと思って「あいてまーす」とだけ返事をする。
ドアが開いて誰かが入ってきた。足音が三人分あった。となると嬉々も一緒なのだろう。
計算問題が一区切りついてシャーペンを置いて振り返る。
案の定薫たち三人が立っていた。
薫も嬉々もいつも通りの表情で、宙一だけが二人の影でよく見えない。
「おかえり、結構遅かったね。……なんで全員棒立ち? あがらないの?」
ドアの前に突っ立った三人にそう促せば、皆はゴソゴソと靴を脱いでいつも通りの配置でテーブルを囲う。
「で、二人は何の話だったの? 薫も禄輪さんに呼ばれてたよね、どうだったの?」
「出発する日が決まった」
薫の言葉に一瞬息が止まって、それでも何とか「そう」と相槌を打つ。
動揺がばれないように必死に声を張って「いつ?」と尋ねた。