宙一だけなら心当たりは山ほどあるはずだが嬉々も一緒となれば話は変わってくる。
お説教や罰則の類では無さそうだ。
「じゃ、お伝えしましたので俺はこれで!」
「おう! サンキューな!」
はい!と最後まで人懐っこい笑みを浮かべて教室から出ていった後輩を見送り、宙一はうーんと首を捻る。
「何だろ? 嬉々も一緒ならお説教の類ではなさそうだし」
「呼び出しがあってまず説教かどうか疑うくらい心当たりはあるんだね」
「そりゃまだ怒られてない案件が十三はあるからな」
説教ではないと判断したのか宙一は直ぐに悩むのをやめて手元の作業に集中し始めた。
その時、また後ろの扉がガラリと開く音がして言い忘れでもあったのだろうかと振り返ると、そこにあったのは禄輪の姿だった。
ほだかの社が襲撃されてから神修の非常勤講師を休んでいたので、禄輪と会うのはもっと久しぶりだった。
「禄輪さん!」
「芽、久しぶりだな。お前たちも真面目に勉強してたか?」
以前と変わらない笑みを浮かべて小さく手を挙げた禄輪。
しかし心做しか顔は窶れたように見えて少し胸に不安が募る。