「宙一お前後輩に"そらちー"って呼ばせてるの?」
「だってお前らが呼んでくれねぇんだもん。────寒いだろ、中入ってこいよ!」
失礼します!と人懐っこい笑みを浮かべた宙一の後輩はパタパタと走ってきた。
「わっ! そらちーさん髪切れるんですか!? すごーい! めっちゃ器用ですね!」
「だろう? そうだろう? もっと褒めていいんだぞ!」
鼻高々にガハガハと笑う宙一にため息をつく。
「俺も今度切ってください!」
「いいぞいいぞ、武田信玄、杉田玄白、正岡子規どれがいい?」
「強そうなので武田信玄カットで!」
いいのか後輩もれなく全部ハゲだぞ、嬉々の冷静な突っ込みに「ええ!?」と大袈裟に驚く。
そして「酷いですよォ」と膨れた顔で宙一の背中をぽこぽこと叩く。
「宙一に用があったんじゃなかったの?」
話を戻すきっかけを与えれば、「あっ」と声を上げて手を止めた。
「そうなんです! そらちーさんへ伝言があって! 嬉々さんにも!」
嬉々が目を細めて後輩を見た。
「この後17時に神楽殿へ集合とのことです!」
「神楽殿? 何でだ?」
「知りません! でも俺ら一年も全員呼ばれてます!」