「でも次出発する前には切らないと、今度帰ってきた時は売れないバンドマンみたいになるかも」



薫は伸びた前髪を引っ張った。



「次の出発まだ決まってないんだよね?」



自分のそんな問い掛けに、うんとひとつ頷く。

帰ってきた時に薫が所属する班員に負傷者が沢山出て実働出来ない状態なのだと言っていたから、班員が回復するか新しいメンバーが補充されるまでは呼び出されることは無いのだろう。


どこも神職が人手不足の今後者はなさそうなので、もう暫くは待機が続くはずだ。



「にしても最近静かだよなぁ。薫何か聞いてねぇの?」

「何も」

「じゃあ嵐の前の静けさだったりして〜」



そう言うのは口に出した時にと言いかけたところで、教室の後ろの扉がガラリと勢いよく開いた。

みんな驚いて弾けるように振り返る。



「あっ、そらちーさんいた! いつもこの時間は反橋の下だから探しましたよ!」



高等部の松葉色の制服を着た小柄な少年だ。

上履きに入ったラインが青だったので高等部の一年生だろう。親しげに話しかけていた様子を見ると、宙一が所属する究極祝詞研究会の後輩だろうか。