その日の放課後、寮へ戻る前に髪が伸びた嬉々のためにヘアサロン宙一が開店した。



「お客様今日はどうしますか〜?」


ゴミ袋に穴を開けただけの即席のケープを嬉々に被せながら宙一は楽しそう尋ねた。



「うるさい黙れとっとと始めろ」

「ったく……少しくらい乗ってこいよ。ほら、前髪切るから目瞑って」



言われた通りに目を閉じた嬉々。

宙一は今回も迷うことなくザクザクとハサミを入れていく。



「お前ほんと手先だけは起用だね」



椅子に跨りストーブの傍で温まりながらそう言う。



「おうよ。頭空っぽな分こっちに全振りしてるからな! 頭以外は結構優秀だぜ〜」



ソレ胸張って言えることなの、と薫の冷静なツッコミが入る。



「薫も髪結構伸びたな」

「あー、切りに行く暇なかったし」

「嬉々の後で切ってやろうか? 十センチくらい」

「あはは、善意チラつかせてハゲにしようとするのやめてくれる?」



お客様六十年後のトレンドはハゲなんですよ、そりゃそうだろうね。

コントみたいな二人のやり取りにくふくふ笑いながら椅子の背もたれで頬杖をつく。