「じゃあ、なんかあったら言って」
気を遣ってかそれ以上は深入りしてこなかった薫は、缶の残りを飲み干した。
自分も立ち上がって、眠る嬉々を背におぶる。
俺ら帰るよ、と薫が宙一の頬を叩けば宙一はむにゃむにゃと返事した。
「俺も、ケータイ買ってもらおうかな」
今までは「必要ある? ソレ」の一択だった薫がそんなことを呟く。珍しいねと目を丸くすれば、薫は「まあね」と肩を竦めた。
「そしたら、いつでも連絡できるでしょ」
「あ……」
「変な芽。お前が前にそうしたいって言ってたじゃん」
そうだっけ。そうだったか。そんなことを言ったような気もする。
薫が怪訝な顔でこちらを見ているのに気がついて歩く速度を早めた。
薫と顔を合わせるのが今は少し苦しい。理由は分からない。