あらかた部屋が片付いて、缶の残りをちびちびと消費しながらとりとめのない会話をした。
薫がいない間の授業の話や、宙一がサッカーボールを本殿の屋根に乗せて罰則を食らったこと、嬉々が自分たちで呪いを試そうとしたこと、皆で銀杏を炒って食べた事。
薫は楽しそうに相槌を打って、たまにケラケラ笑いながら聞いてくれる。
「ホント宙一だけは中等部から何にも変わらないんだから」
呆れたようにどこか嬉しそうに、薫は目を細める。
「天然の阿呆だからね」
「あはは、天然の阿呆。でも宙一も嬉々も相変わらずで何か安心した」
大人びたそんな言葉に何故か胸がざわつく。
薫と目が合った。
「芽は大丈夫?」
「……え?」
思わず聞き返したのは、聞こえなかったからでも予想外の質問だったからでもない。都合の悪いものを隠していて、それが見付かったような気がしたからだ。
薫に隠す事なんて何も無いはずなのに、
「どうかした? なんか違う、いつもの芽じゃない感」
顔をのぞき込まれて咄嗟に逸らした。
取って付けたような「気のせいだよ」に多分薫も気付いている。