「芽!」
名前を呼ばれて振り返れば、階段の上から宙一と嬉々がこちらを見下ろしていた。
小走りで階段をおりてくると、二人は隣に座った。
気まずい沈黙が流れた。
宙一は何か言いたげな顔をして視線をさ迷わせる。
「……銀杏食う?」
最終的に選ばれた台詞はそれだったらしく、思わずぷっと吹き出した。
安心したように宙一が顔をほころばせる。
「ちょっと多めに炒ってさ、薫の分も作っとこうぜ!」
「帰ってくるよりも先に腐っちゃうかもよ」
「そんときゃまた作ればいいじゃん!」
ほら立てよ、と宙一に背中を叩かれた。
嬉々が無言で手を差し出したので、有難くその手を掴ませてもらって弾みをつけて立ち上がる。
「宙一。さっきはごめん」
「いいって。俺もお前が重度のブラコンだった事忘れてたのが悪かったし」
「そうだよね。結局宙一が全部悪い」
「ブラコンは否定せんのかい」
事実だし、と笑って一歩踏み出す。
三人横に並んで階段を駆け下りた。