学舎から出てまねきの社へ続く石階段を降りる。
季節は十一月に入り、鎮守の森はどこもかしこも色鮮やかで社頭のあちこちが銀杏臭い。
毎年この時期になると宙一がどこからかこっそり七輪を盗んできて、拾い集めた銀杏を皆で炒って食べていた。
でも……今年は出来そうにないな。
地面に転がる銀杏を蹴飛ばし、階段の途中に腰を下ろした。
薫が神修をはなれてもうふた月経った。
元々ケータイ電話は持っていなかったし、これから各地を転々とすることになると聞いていたので手紙も出せない。
連絡を取る手段がなく、今がどういう状況なのか何一つ分からなかった。
連絡が無いのは元気なショーコだよ、と宙一が気を使うように自分の背中を何度も叩いた。
宙一の言う通りだ。毎日色んな情報が本庁には届いている。それこそ薫がいるのは最前線で、前線なら情報は途切れることは無いはずだ。
それでもまねきの社で見かける神職が明らかに少なくなり、座学の科目担当の先生が変わり、頻繁に行われるようになった神葬祭の参加が義務ではなくなったり、そういう変化を目の当たりにしているとどうしても胸が騒ぐ。