それでも、自分の近しい人が無事だったということだけでも事実として分かって安堵する。

机の上に手をついて深く息を吐いた。

宙一は不安げに眉を顰める。



「……薫、大丈夫かな」

「無事に決まってるでしょ」



間髪入れずに発した言葉は思ったよりも尖っていて冷たい。

鈍感な宙一ですら直ぐにそれを察して「ごめん、馬鹿なこと言ったな」と直ぐに謝罪を口にする。


明らかに宙一のその言葉は薫の安否を心から案じるもので、善意が滲んだ結果だとは分かっている。

こんな事でへそを曲げるなんて馬鹿げているとは分かっていても、直ぐにその謝罪を受け入れるのが難しかった。


申し訳なさそうに顔色を伺う宙一の視線から逃れるように、「頭冷やしてくる」と断りを入れて教室を出た。