鎮守の森の秋の色が深まった頃、本庁の置かれているまねきの社には前線の戦況が次々と入ってきた。

噂好きの学生間でその情報は瞬く間に広がって、尋ねずとも現状がかなり厳しい状況に置かれているのが分かった。



「ヤバいヤバいヤバいッ!」



昼休み明けの次の授業が休講になって、「この後どうする?」なんて嬉々と話していると、トイレに行っていた宙一が多分洗った後拭っていないびしょ濡れの手を振り回しながら教室へ飛び込んできた。

膝に手を着いて肩で息をする宙一に苦い顔をする。


「ちょっと。洗ったのは偉いけどせめて水気飛ばすくらいのこと出来なかったの? 雫飛んできたんだけど」

「お前の顔面で拭いてやろうか」

「それどころじゃないんだって! ほだかの社が襲撃されたって!」



勢いよく立ち上がれば椅子が後ろに激しい音を立てて倒れた。

ほだかの社、禄輪が管轄する社だ。



「禄輪さんは……!?」

「それが丁度別の任務で社を離れてたタイミングらしくて、今確認しに戻ってるって」



良かったという言葉が舌の付け根まででかかって、かぶりを振って飲み込んだ。

禄輪は無事でも社は無事では済んでいないはずだし、ほだかの社は住み込みの神職も多い。


ここまで噂が流れてくるということはそれほど規模が大きいということだ。