薫が自分の肩を押した。もうとっくに力なんて入れていなくて、すとんと薫の上から降りる。
体を起こした薫はトンと自分の胸を叩いた。
「なんて顔してんの、別に死にに行くわけじゃないんだから」
薫が笑う。
自分は一体どんな顔をしているんだろうか。
「もう何処も安全な場所なんてないんだって。だからさ、宙一と嬉々のこと頼むね」
もう一度自分の胸を叩いた薫に項垂れる。
後ろにいたはずの薫が気が付けば横に並び、そして今日ついに、手が届かないほど先に行ってしまったような気がした。
どろり、胸の奥に少しづつ何かが広がっている。



