言祝ぎの子 参 ー国立神役修詞高等学校ー



あまりにも真剣な目に言葉が出てこない。

唇を噛み締める。



「斎賀先生、結構好きだったんだ。いちいち煩いし拳骨は痛いし、ゴリラみたいな顔してるけど。だからさ、斎賀先生のためにも、お前らが同じ道を辿らないようにするためにも、行くって決めた。"友達"だから」



薫が胸ぐらを掴む自分の腕を掴んだ。「相談しなくてごめんね」と昔みたいに困った顔をして笑う。

胸ぐらを揺すった。何度も揺すった、その度に薫が「うん」と相槌を打つ。



「友達なら、事後報告じゃなくて事前に相談するもんだろ馬鹿」



宙一が目元を真っ赤にしてそう言った。

「そうなの? こっちは友達初心者なもんでさ」なんてしれっと答えて、顔を梅干しみたいにぐしゃぐしゃにして堪える宙一を見て笑った。



「いつ出るんだ」



嬉々が静かにそう尋ねる。



「明日の昼には発つよ」

「そうかせいぜい下痢にならないといいな」

「ちょっと、俺のこと呪う気満々じゃん。長旅になるから勘弁してよ」



くすくすと笑った薫に、嬉々は俯いた。

指が白くなる程握り締められた拳に、薫も気付いていた。