言祝ぎの子 参 ー国立神役修詞高等学校ー



「断りなよ。本庁からの任務は選択権があっただろ。自分の力量に合わない任務は、断ってもいいことになってるはずだよ」

「そうだけど、もう行くって返事したんだ」



その言葉にカッと頭に血が上る。

勢いのまま薫の胸ぐらを掴むと、薫はバランスを崩してそのまま後ろに尻もちを着いた。薫の上に馬乗りになる。



「何勝手なことしてんの!? どれだけ危険なことなのかお前は分かってないんだよッ!」

「分かってる。分かってるから、引き受けた」



自分とは反対に薫はとても落ち着いていた。

真っ直ぐ自分を見上げる視線に、思わずたじろぎそうになる。でも負けじと睨み返した。



「正直ずっと自分の力は何の役にも立たないと思ってたんだ。でもさ、覚えてる? 中二の職場体験。あの日、初めて自分の力で他の人を助けられるんだって知って、俺嬉しかったんだ。もちろん芽たちの助けがあって事だったのは分かってるけど」

「じゃあ他の場所でその力を使えばいいだろ!? 何でその場が空亡の修祓になるんだよッ!」



奥歯を噛み締めた。

薫がまるで何もかも受け入れたようなとても優しい顔をしたからだ。



「俺、この場所が好きだよ。ここが俺の居場所なんだって初めて思えたんだ」

「だったら、ずっとここにいなよ……ッ」

「だからこそ、この場所を守るために行きたい」