倉庫に戻してくるね、と軽々と脚立を持ち上げた隆永は幸の横を過ぎて店の奥に入っていく。

通り過ぎる瞬間に、幸の頭をポンと叩いた。


叩かれたところをそっと押えた。自分とも父親とも違う骨ばった大きな手だ。

今までなんとも思わなかったはずの、いきなり自分の手を握ってくるような不埒なその手の感触がいつまでも残っている。


胸の鼓動がいつもより大きいのは、脚立から落ちてびっくりしたから。きっと。