「────おはよ、久しぶり」
結局夏休みは一度も顔を合わせる事がなかった薫との再会は、二学期が始まる始業祭の日の朝だった。
宙一や嬉々と合流して朝食のお膳を受け取り広間へ入ると、先に来ていた薫がまるで昨日も会っていたような調子でこちらに手を振った。
「薫!」
ずっとどこか物憂げな顔をしていた宙一が表情を明るくして駆け寄った。
「お前いつ帰ってきたんだよ!」
「今朝だよ。禄輪のおっさんと稽古してたら前日の車に乗り遅れちゃってさ」
いつものように薫の背中から飛びついて首にプロレス技をかける。
その衝撃で味噌汁を制服にこぼした薫は宙一の顔面を鷲掴みにして引き剥がした。
「あははっ、いつもの薫だ〜……って、違ぇ! この薄情者! なんで俺には手紙返してくれねぇんだよ!?」
「ドラクエの進捗具合書かれた手紙になんて返事すればいいのさ」
「凄いねぇとか宙一くんは天才だねぇとか色々あっただろ!」
「あはは、自画自賛キモ」
コノヤロー!と暴れる宙一の顔はどこか嬉しそうで、いつもの賑やかさが少しずつ戻ってきている気がした。



