言祝ぎの子 参 ー国立神役修詞高等学校ー



「先の空亡修祓についてはご存知ですか」

「報告は聞いたな」

「俺たちの恩師が、その戦いで亡くなりました」



そうか、と白虎はいつも通り淡々と相槌を打つ。

この白虎に人間らしいリアクションや人の機微の理解を求めても無駄なので、そこで言うのは止めた。


ばさばさと音を立てて御神木から飛び降りてきた白虎は猫のようにしなやかに降り立つ。



「人と妖の統治、それが神職の役目だろう。ならその神職は自分の勤めを全うしたまで」



だからお前達はその神職を讃えてやるのが道義だろう、とでも言いたいのか。

確かに白虎の言う事は何一つ間違ってはいない。けれどあまりにもそれは道徳心から逸脱している。



「お前がいくらへこもうと構わんが、君の前では顔に出すなよ」



白虎がくるりと背を向けて社務所を見た。

ちょうどその時ガラリと戸が開いて伸びをしながら志ようが出てくる。

「あれ! 芽くんいつきたのー? ご飯食べた?」そう言って大きく手を振りながらこちらへ駆け寄ってくる。




「一番心を痛めているのは君なんだからな」



白虎はそう言うと笑みを浮かべて志ように駆け寄った。