「おい小童、落ち葉掃き残してるぞ。しっかり最後までやれ」
窓枠を指でなぞる姑のような言い草で御神木の上からそう言った白虎に、芽は顔を顰めながら「はい」と返事をした。
昼過ぎ頃にかむくらの社へやって来た。
しかし志ようが珍しく部屋に籠って仕事をしていたので、彼女が出てくるまでの時間で社頭の掃き掃除をすることにした。
監視するためかついてきた白虎がなにかする度にチクチクと指摘してきてそろそろうんざりしてきた頃だ。
はぁ、とため息を零すと「何辛気臭い顔をてるんだよ」とまた咎められる。
「君を心配させるような顔はするな。ただでさえお前が来る日は余計な仕事が増えているんだからな」
「では白虎さまが俺の話を聞いてくださるんですか」
あからさまに嫌そうな顔をした白虎だったが、志ようのことを思い出して天秤にかけたようだ。もっと苦い顔をする。そして「……耳だけ貸してやる」とそれはそれは不本意そうな声で呟いた。
断られるだろうと思っていたし白虎に話す気はさらさらなかったのだが、思わぬ展開に目を瞬かせる。
早くしろ、と急かされて握っていた竹箒の柄をじっと見つめながら口を開いた。



