言祝ぎの子 参 ー国立神役修詞高等学校ー



自分と宙一、嬉々は神修に残ることを選んだけれど、薫は夏休みの初日から禄輪が管轄するほだかの社へ帰省している。

神修に残ることを禄輪からも進められたらしいけれど、ほだかの社に帰ると言い張って半ば無理やり帰って行った。

そんな薫が心配で毎日手紙を送っているけれど、返事をくれるのは七通に一回程度。先日送った手紙に「もっと返事が欲しい」と書けば、「芽が多すぎるんだよ」と一言だけ荒々しい字で書かれた手紙が翌日に送られてきた。



「今どき連絡手段が手紙って。21世紀に時代錯誤過ぎるだろ」



確かにと肩を竦めれば、宙一は乾いた笑みを浮かべた。



宙一の様子がおかしい。

いや宙一だけじゃない。嬉々も薫も、多分自分も。皆隠しきれないやるせない気持ちをずっと抱えている。

でも無理もない。少し前から毎日のように入ってくる訃報は、心を疲弊させるには十分だった。

聞こえてくる名前は、知っているのもあれば、全く知らない名前もある。気が付けば、知らない名前であることにほっとしている自分がいて、それに気がつく度に心に大きな石が投げ込まれて少しずつ重くなっているような気がした。