言祝ぎの子 参 ー国立神役修詞高等学校ー



一学期の奉納祭は中止になって、程なくして神修は夏休みに入った。

本庁からは学生へ帰省を自粛するように呼び掛けがあって、今年は半分ほどの生徒が実家には帰らず寮に残った。

神修に通う学生のほとんどが、実家は社を管理している家系、空亡の出現で次々と社が襲撃されている状況の今は実家ですら危険な場所になる。

両親も我が子には、少しでも安全な場所にいてもらいたいのだろう。



本来ならうんと静かになる神修の八月は、いつもよりかは賑やかだったけれど、やはりどこか物寂しくセミの鳴き声がよく響いていた。



「お、芽じゃん」


遅めの朝食を食べていると、寝癖の着いた頭に寝間着姿の宙一が広間にお膳を持ってやって来た。



「おはよ。て言ってももう昼だけど」

「なに、芽も寝坊? めずらしー」



向かいに座った宙一はいただきますと手を合わせる。あまり食が進まないのか、冷奴をちびちびと摘むだけだった。



「……薫とは連絡取り合ってんの?」

「うん。薫ケータイ持ってないからやり取りは全部手紙だけどね。出したら一週間後には返事くれるよ。元気そうだよ。禄輪さんの所で毎日稽古してるみたい」