「────そっか忘れてた、斎賀先生の誕生日って今月か」
「そ! だから今年はどんなサプライズにするか、そろそろ考えようぜ」
「去年は先生が入ってきた瞬間、顔面にクリームパイぶつけたよね」
「あれはクッソ怒られたよな〜」
その日の六限目の後、帰り支度を整えてホームルームが始まるのを待っていると、珍しい人物が教室へ入ってきた。
「あれ、禄輪センセーどうしたの!」
自分たちが高等部に上がると同時に、非常勤講師として神修で教鞭を執っている禄輪だった。
宙一が不思議そうにそう尋ねれば、禄輪は小さく手を挙げて「ちゃんと座りなさい」と促す。
その表情は心做しか暗かった。
お互いに顔を見合せながら、各々に椅子の向きを正して席に座る。
教壇に立った禄輪は項垂れるように手をついてひとつ息を吐いた。
「禄輪先生……?」
堪らず名前を呼んだ。
「落ち着いて聞きなさい」
禄輪がひと呼吸おいて口を開いた。
────斎賀先生が亡くなった。



