言祝ぎの子 参 ー国立神役修詞高等学校ー







「────そっか忘れてた、斎賀先生の誕生日って今月か」

「そ! だから今年はどんなサプライズにするか、そろそろ考えようぜ」

「去年は先生が入ってきた瞬間、顔面にクリームパイぶつけたよね」

「あれはクッソ怒られたよな〜」


その日の六限目の後、帰り支度を整えてホームルームが始まるのを待っていると、珍しい人物が教室へ入ってきた。



「あれ、禄輪センセーどうしたの!」



自分たちが高等部に上がると同時に、非常勤講師として神修で教鞭を執っている禄輪だった。

宙一が不思議そうにそう尋ねれば、禄輪は小さく手を挙げて「ちゃんと座りなさい」と促す。

その表情は心做しか暗かった。



お互いに顔を見合せながら、各々に椅子の向きを正して席に座る。

教壇に立った禄輪は項垂れるように手をついてひとつ息を吐いた。



「禄輪先生……?」



堪らず名前を呼んだ。



「落ち着いて聞きなさい」



禄輪がひと呼吸おいて口を開いた。






────斎賀先生が亡くなった。