言祝ぎの子 参 ー国立神役修詞高等学校ー



日が暮れる少し前に帰ってきた。

神修へ着く少し前に宙一から【大物釣れた】という件名で嬉しそうに亀を掲げた宙一の写真が添付されたメールが届いていたので、寮に戻る前に庭園に立ち寄ってみると、反橋の下の陰で談笑している三人の姿を見つけた。


「おっ、芽が帰ってきた」


いち早く自分の姿を見つけた宙一が手を振る。それに応えながら歩み寄った。



「クソ〜、せっかくデカいの釣れたのに丁度今リリースしちまった。芽にも見せたかったなぁ」

「宙一ね、池に引きずり込まれそうになったんだよ。たかが亀相手に」



よほど面白かったのかその時の光景を思い出して薫がけらけらと笑う。

その横顔を見ながら、昔に比べてよく笑うようになったななんて思う。



「何だよ薫! お前は一匹も釣れなかったくせに!」

「宙一がギャーギャーうるさいから、亀も鯉も逃げてくんだよ」

「お、言ったな? じゃあ今から再戦だッ! 嬉々、芽、審判しろ審判!」


静かに本を読んでいた嬉々の二の腕を掴んだ宙一は容赦なくその角で殴られる。

行こうと薫に手を掴まれて、呆れ気味に笑いながらも立ち上がった。



「俺もやろっかなぁ、久しぶりに」

「えー、芽は審判でいいよ。釣り得意じゃん」



薫が唇を尖らせて不満の声をあげる。

初等部に通っていた頃、夏休みに帰省した時は実家の社の池でしょっちゅう釣りをしていた。いつも勝負をするけれど薫が負けて、「ズルした」「してない」とよく喧嘩になった。