言祝ぎの子 参 ー国立神役修詞高等学校ー



大袈裟な、と苦笑いを浮べる。


「でもなりたいものがないのに、どうしてそんなに頑張の? 私なんてしなくていい努力は絶対しないよ」


不思議そうに首を傾げた志ように、芽は目を細めた。


「約束したんです」

「約束?」

「はい、薫と────弟と。強くなって俺が守るって」



神修へ来て少しずつ変わっていく薫をずっとそばで見てきた。

未だに学校では実践練習を許して貰えないけれども、中学最後の夏休みに実家へは帰らずほだかの社で過ごした際に、禄輪と稽古する姿を見て驚いた。

自分ですらまだ知らない祝詞の練習をする薫、着実に実力を伸ばしている。

いつも自分の数歩後ろ付いてきていたはずの薫が、ほぼ隣りどころか数歩先にいるような感覚だった。

幼い頃の約束だけれどずっと薫を守るのは自分で、薫は自分の後ろにいるものだと思っていたからこそ、嬉しさと同時に少しの焦りもあった。



「お前みたいなヘナチョコに守られて、薫とやらもいい迷惑だろうな」

「こら白虎! 何て事言うの!」



はん、と鼻で笑った白虎に志ようがそう咎める。