大袈裟な、と苦笑いを浮べる。
「でもなりたいものがないのに、どうしてそんなに頑張の? 私なんてしなくていい努力は絶対しないよ」
不思議そうに首を傾げた志ように、芽は目を細めた。
「約束したんです」
「約束?」
「はい、薫と────弟と。強くなって俺が守るって」
神修へ来て少しずつ変わっていく薫をずっとそばで見てきた。
未だに学校では実践練習を許して貰えないけれども、中学最後の夏休みに実家へは帰らずほだかの社で過ごした際に、禄輪と稽古する姿を見て驚いた。
自分ですらまだ知らない祝詞の練習をする薫、着実に実力を伸ばしている。
いつも自分の数歩後ろ付いてきていたはずの薫が、ほぼ隣りどころか数歩先にいるような感覚だった。
幼い頃の約束だけれどずっと薫を守るのは自分で、薫は自分の後ろにいるものだと思っていたからこそ、嬉しさと同時に少しの焦りもあった。
「お前みたいなヘナチョコに守られて、薫とやらもいい迷惑だろうな」
「こら白虎! 何て事言うの!」
はん、と鼻で笑った白虎に志ようがそう咎める。



