食後はいつも志ようの書類仕事を手伝った後に昼の祝詞奏上があり、それが終われば自分との稽古の時間を設けてくれる。
「もう私から教えられる事なんてないけどなぁ」
社頭で一通り習ったことを披露すれば、拝殿の前で座ってみていた志ようがそう言った。
「でもまだ力の調整でミスする事があるんです」
「芽くんのミスは1が1.01になる程度じゃない。私なんて1が50になってからミスだと思ってるのに」
それは問題なんじゃないか、と心の中で突っ込む。「それは問題だろ君」御神木の上で眠っていた白虎が自分の代わりに突っ込んだ。
不貞腐れた志ようがうるさーい、と耳を塞ぐ。
「でも本当に完璧だよ。私が本庁の役員なら今すぐ明階に昇格させたいくらい」
「浄階じゃないんですか?」
「自惚れなさんな」
駆け寄ってきた志ようにぴんと額を弾かれる。
くく、と肩を竦めた。
「芽くんは一体どこを目指してるの? 卒業したら間違いなく本庁から声はかかるだろうし、やっぱり役員になりたい?」
「どうでしょう。昔は囃子方になりたいなんて言ってましたけど、今は特に」
「あははっ、囃子方か〜! 横笛得意って言ってたもんね。でもこんなに出来る子が神職にならないなんて言い出したら、本庁の役員たち皆ひっくり返るわよ」



