言祝ぎの子 参 ー国立神役修詞高等学校ー



「嫌になったりし────」



あまりにも酷な質問をしようとしていたことにはっと口を閉ざした。

言いきらずとも伝わったらしく、志ようは小さく首を振ってからからと笑う。



「ここでの暮らしも案外悪くないのよ〜。ネットも繋がるしお願いすれば割と何でも経費で落ちるし。それにいまは同居人……同居神使もいる。社でのお勤めだって私にしか出来ないことだし、やりがいもある」



髪をくしゃりと撫でた手はそのままするりと頬を摩った。

温かい手だ。温かくて柔らかくて、どこか頼りない。幼い頃に自分を抱きしめてくれていた手も、こんな風に小さかった。



「でも……強いて言うなら、こうやって芽くんや他の神職たちが頑張ってくれている時に、何も出来ないのが歯痒いかな。────ま、口に出すだけ無駄だから、私はここでできることを精一杯していくの」


志ようは置いた箸を再び手に取って大きな一口で肉を頬張る。

ん、私天才!なんて言って自画自賛するその横顔にどう声をかければ良いのか分からなかった。