言祝ぎの子 参 ー国立神役修詞高等学校ー



「それにしても、最近休講多いね」



志ようは難しい顔をして息を吐く。



「隣県に空亡が出て、近隣の神職に召集がかかったんです。それで神修の先生たちも出払ってて」

「そう……状況報告は私の所にも上がってくるんだけど、事後報告が多くて。高いところでふんぞり返ってる癖に、 審神者って結局お飾りの立場だからさ」


息を吐いた志ようは食欲が無くなったのかまだ突いてすらない橋をテーブルに置いた。

そんなことは無い、と否定してもいつも曖昧に笑って力なく首振るだけだ。



「……どうして審神者はこの社を離れてはいけないんでしょうか? 他の神職は外から通う者もいますし、社頭の寮で家族と暮らす者もいます。敷地から出ては駄目って……軟禁じゃないですか」

「あははっ、軟禁か。確かにそうよね〜」

「笑い事じゃないですよ」



眉を提げてそう言えば、志ようは手を伸ばして自分の頭をぐりぐりと撫でた。



「ここを出てはいけないという決まりがあるのは、先見の明を持つ審神者を守るためでもあるのよ。悪い妖達からすれば、私はサーロインステーキにでも見えてるんでしょうよ」

「サーロインステーキ……」

「それにほら、私って千年に一度の逸材って言われる程言祝ぎの力が強いし? こんないい人材に逃げられでもしたら、国が傾いちゃう」

「流石に国は傾きませんよね」



冷静に突っ込めば、志ようは頬に手を当てて「てへっ」と舌を出す。