一層顔を歪めたその人物はぐぬぬ、と口篭る。「だがな」と何か反駁しようとしたその次の瞬間、真後ろからその白い頭に小さな拳が落ちた。
いでっ、と悲鳴をあげてその場に蹲る。
「白虎! いい加減芽くんに意地悪するのはやめなさい! まったく、十二神使ともあろう妖が情けない……」
影から現れた巫女装束の女性に、芽はほっと息を吐く。
自分よりもふた周りほど年上のその女性はこの社を守る者、全ての神職の頂点に御座すかむくらの社の言祝ぎの巫女、奉日本志ようだ。
「君! 俺ぁな、この小童にしきたりってやつを……」
「はいはいはい、そんな小姑みたいなこと言ってると嫌われるよ。芽くん、行こうか」
「はい、審神者さま」
志ように背中を押されて、芽は社頭に足を踏み入れた。



