何重もの鳥居に護られた深い鎮守の杜の奥にあるその社は、全ての神職の頂点に立つ者だけが仕えることを許された場所。
年中魔除の花が咲き乱れ、何もかもが言祝ぎの力に満ち溢れている。
この場所を知る者は限られた一部の人間だけ、参拝を許されるのは年に一度きり。
今月で四度目の参拝になる芽は、大鳥居を潜ったその瞬間目の前に現れた人物に苦い顔をした。
「……こんにちは、白虎さま」
薫は自分よりかは幾分か背の高いその男を見上げる。
汚れを知らない真珠色の白髪に、蜂蜜を掬いとったような琥珀色の瞳、中性的な顔立ちのその男は人の出で立ちをしているが人ではない。
髪と同じく艶のある白の着物を見に纏った姿はまさに神の化身の如く美しい。しかしその美しい相貌をこれでもかと歪め不快感を露わにした。
「また来たのかお前。参拝は年に一度きりだと何度言えばわかるんだ?」
「私は審神者さまにお許しを頂いています」
「俺は許してない。君より御祭神さまに近しい存在は俺だぞ。と言う事は俺の許しが無ければお前は立ち入ることが出来ないはずだ!」
「招かれざる者は一つ目の鳥居で鎮守の杜を彷徨うことになりますが、私は無事辿り着けました。御祭神さまにもお招き頂いているのだと認識しております」



