「朝からマジでついてねぇ……」
「自業自得でしょ」
「そもそも隣の部屋の癖に何で起こしてくれねぇんだよ芽!」
「あのさ、いい加減芽と間違えるのやめてもらっていい? それわざと?」
机に頬杖を付いて顔をしかめると、「あ、お前薫か」と悪びれた様子もなく文句を続ける。
もう三年近く毎日顔を合わせているというのにも関わらず、相変わらず自分と芽の見分けがつかない宙一にため息をこぼす。
そっくり過ぎるお前らが悪い、と開き直るのはお決まりの光景になっている。
「で、一限目なんだっけ」
「漢方薬学と振り替えだって」
机の中から教科書を取り出しながらそう答える。
「げ、今日までのレポートやってねぇ……あのさ薫くん?」
宙一が胸の前で指を組んで、瞳を潤ませながらこちらを伺う。
「ヤダ」
「まだ何も言ってねぇだろ!」
「無理、ヤダ、無理」
「二回言うなよ! なら芽!」
「ヤダ、無理、ヤダ」
くそぉー、と慌ててノートを広げた宙一が頭を抱えながらシャーペンを走らせる。
芽と顔を合わせて声を上げて笑った。