言い争いを始めた二人を横目に手を伸ばした。

冷蔵庫で冷やされていたのか、金平糖とチョコががっちり固定されている。

摘むと言うよりかはぺきっと剥がして、そのまま口に放り込んだ。


冷たくて甘い、優しい味が口の中に広がる。

いつも食べていた金平糖と同じ味、何も変わらないはずなのに、なぜか。



「え、薫? どうしたの……?」



涙が溢れた。理由は自分でも分からない。笑いそうなのにぼろぼろと涙が溢れた。

胸が苦しいのに全然嫌じゃない。

訳が分からない、ただ温かくて心地よい。



いつも遠巻きに見られて、ひそひそと噂話をされて生きてきた。もうそれには慣れたし、昔みたいにワンワン泣いて悲しむことも無くなった。他人から歓迎されたことなんて、一度も無かった。

遠慮ない言葉で会話したり、気を使わずに接したり、図々しく肩を組まれたり。

サプライズに金平糖を出されたり。

そんなことは生まれてから一度だってなかった、


やっと気づいた、嬉しいんだ。涙が出るほど嬉しいんだ。


その金平糖は、自分がこの場所にいてもいいんだと教えてくれる。誰にも遠慮せず、気を使わず、他の皆と同じように過ごしてもいいんだと言っている。