けれど直ぐにむくりと起きた宙一はにへらと笑うと制服を脱ぎ捨てて下着姿になる。
「お前ら〜見ろよ俺のこの見事な腹踊り〜」
体を器用にくねらせて踊り始めた宙一に、芽が腹を抱えて笑い出す。
無言で携帯電話を顔の前に構えた嬉々はパシャパシャと写真を取り出した。
「無理っ……死ぬ、あははっ」
「死ぬな〜生きろ〜」
タコのように手足をくねらせて芽に絡みついた宙一は唇を尖らせるとそのままぶちゅうと芽の頬に吸い付いた。
げらげらと笑っていた芽の顔が笑ったまま凍りつく。しばらくの沈黙の後、その頬に平手打ちが決まった。
「ちょっとやり過ぎたね、酔っ払い。たこ焼きにでもされたいのかな」
叩かれた勢いで床に転がった宙一がにやけ顔でまだくねくねと踊っている。
ふつふつと込み上げる怒りを纏って冷めた目で宙一を見下ろす芽、珍しく口角を上げながら連写する嬉々、浜に打ち上がったタコもとい宙一。
なんだこの状況は。
なんか、なんか────。
「……ふふ」
思わず笑い声が盛れた。だってこんな訳の分からない状況、笑わずにはいられないだろう。
手の甲を口にあてて小さく笑う。ふと視線をあげれば、目を丸くした芽と目が合った。
気まずくて咄嗟に目を逸らす。
今度はふふ、と芽が笑った。