首に絡みついてくる宙一を無視してコップを煽る。甘酒の優しい甘さが舌の上に広がった。
あの時、宙一たちが駆けつけてくれなければ、あの場を自分一人では収めることは出来なかった。だから三人には感謝している。
お礼はまだ伝えれていなかったけれど、なんなら宙一のあの一言で、いっそう伝える気が失せた。
「ほれほれ、言ってみろよ! "宙一さまありがとうございます! 一生貴方さまにお仕えいたします!"って!」
「キモ」
「おい聞こえてるぞ嬉々?」
騒ぐ宙一に、嬉々は小指を耳の穴に入れて無視した。
一通り騒いだ宙一は、まるで迷惑をかけられた側みたいな顔をしてため息を吐くとコップの甘酒をぐいと煽った。
頬を赤くした宙一がふん、と鼻を鳴らしてこちらを見た。
「まあクラスメイトだし、友達だし? 当たり前のことしただけだから、お礼言われなくても俺は広い心でこれからも接してやるけど?」
「遺恨まみれだね。はーい、薫がすごく面倒くさそうな顔してるから、もう弟に絡まないでください」
何か言いかけた宙一の口に無理やりコップを突っ込んで甘酒を流し込んだ芽。
こぽぽ、と聞こえてはいけないような音がして宙一の顔が茹で上がる。そのままバタン、と後ろに倒れて白目を剥く。
「あ、やば。死んだ? でもこれ甘酒だよ?」
「何でもいい起きてたらうるさいだけだ死なせとけ」
口々に好き勝手話す二人にそれでいいのかと若干心配になる。